こんにちは。暑いですね!
院長です。
「陰睾」とか「潜在精巣」とか言いますが
「タマ」が「袋」に入っていないことがありますよね。
現在獣医学的には「潜在精巣」で呼び名を統一する流れがあるみたいです。
生後40日までは袋に入ってなくても正常です(大型犬は4か月くらいまでとの報告もあり)。
でもそれ以降袋に入っていなければ潜在精巣という診断になります。
ではそんな時どう治療するのか、ということをお話しようかと思います。
去勢手術をするのか、しないのかはメリット、デメリット、リスクをよく考えて決める必要がありますが
ワンちゃんの潜在精巣の場合、タマを残しておくのはあまりにもデメリットが大きいので私は絶対に手術をお勧めいたします。
それはタマが癌になってしまう可能性が非常に高くなる(9~14倍)からです。
いつ癌になるのか?というと、中年齢以降が多いとのことです。
それまでに摘出するのが無難と思います。
タマの癌は精上皮腫、間質細胞腫、セルトリ細胞腫がありますが
潜在精巣では若い年齢でセルトリ細胞腫を発症しやすいと言われております。
そしてワンちゃんのセルトリ細胞腫の症例では10~20%が転移を起こしていたという報告があります。
そのため腫瘍化してから摘出する、というのはリスクがあることがわかります。
潜在精巣は皮膚の下に潜在している場合と、お腹の中に潜在している場合があります。
皮膚の下にある場合は触診で大体どこを皮膚切開すればよいかわかりますが
お腹の中にある場合は触診ではわかりません。
そのため私は超音波検査で位置を特定しています。
点線のどこかに精巣がある エコーで位置を特定
幸いにも今までエコーで見つけられなかったことはありませんが、萎縮してしまった精巣は検出が困難という報告もあります。
腫瘍化する前にまず萎縮するのです。
そしてエコーで見つかった部位の真上を切開すれば、そこに精巣が見つかります。
この子は前立腺のすぐ傍らに潜在しておりましたので、かなり下側を切っております。
タマを取ったら縫っておしまいです。
これで癌化していない潜在精巣の治療は終了となります。
ちなみに!ネコちゃんは精巣腫瘍の発生自体が稀であり、精巣腫瘍予防を目的とした手術は必要ではないと言われています。
それでも男性ホルモンは普通かそれ以上に出てしまうので、攻撃行動の抑制や望まない妊娠の防止のためにはやはり手術が必要です。
ご参考になれば幸いです。