また腎臓関連の話題なのですが少しお付き合い下さい!!

BUN(尿素窒素)とCre(クレアチニン)と腎臓病の関係って、結構認知度が高いですよね。
そのため、当院でも「腎臓のチェックしたいからBUN, Creを測りたい」
とおっしゃる飼い主様もいらっしゃいます。

また、BUNの認識が腎臓と結びつきが強い為か、
「BUN(or Cre)が上昇したら腎臓病なんだ」

と思われている方がかなり多い印象です
検査会社の一般的な健康診断項目でも、腎臓機能のチェック項目としては「BUN,Cre」くらいですから、そう思われても仕方がないのかも知れません。

BUN, Creを評価する時の注意事項をまとめてみました。

① 慢性腎臓病でBUN, Creが上昇するタイミングは腎機能の65%~75%が失われてから

 これって遅すぎると思いませんか?院内や外部検査会社の健康診断で血液検査を行なって、BUNやCreが上昇しているとわかった時、実はもう25%しか腎機能が残っていないと言われたらちょっとショックですよね。
 僕ら獣医師もそう思っていたので、さらに早期に腎機能の低下を検出できる項目が近年開発されており、各検査会社で測定可能です。それが

SDMA(犬、猫)
シスタチンC(<15kgの犬のみ)

という項目です。これらは腎機能の40%~50%程度が失われた時点で腎臓病を検出できると言われています。
若い健康な子で検査する必要は必ずしも無いかもしれませんが、中年齢を過ぎた子、腎臓病になりやすい品種の子などは健康診断に組み入れてもいいでしょう。

② BUN(or Cre)が上昇したから=慢性腎臓病ではない

「慢性腎臓病である」と診断するためには、少なくとも身体検査、血液検査(SDMAシスタチンC含む)、尿検査、画像検査を行う必要があります。つまり

BUN, Creの上昇
SDMA or シスタチンCの上昇
尿比重の低下
腎臓の形の変化

という異常所見を組み合わせて判断しなければなりません。
BUNやCreが上昇する疾患は腎臓病だけではないからです。

BUNが上昇した場合に考えられる疾患を列挙すると(Creも概ね同じなので省略します)以下の様です

【腎前性】
脱水、副腎皮質機能低下症、ショック、失血、心不全
【腎性】
糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎、腎盂腎炎、アミロイドーシス、中毒、腎虚血(梗塞など)、先天性腎疾患、腫瘍
【腎後性】
尿管閉塞、尿道閉塞、尿腹症
【尿素の産生増加】
消化管出血(口から小腸のどこか)、タンパク質豊富な食事、体のタンパク質分解の亢進(飢餓、加齢、重度の炎症、筋肉の損傷)

ワンちゃんでは「糸球体腎炎」、ネコちゃんだと「尿細管間質性腎炎」の進行した状態の時に「慢性腎臓病」と診断されることが大多数と考えられます。

仮に腎前性や消化管出血だった場合は尿比重は低下しませんし、SDMAやシスタチンCも正常であることがほとんどです。そしてこの場合大事なことは、「治る」かもしれないということです(歯周病でBUNが上昇することだって十分にありえる訳です)。
高タンパク食(肉とか魚メインの食事)を食べているだけの事もよくあります。これは病気ではありません。

ということで、腎臓が気になる場合におさえておかなければならない検査は

一般的な健康診断+SDMA or シスタチンC+尿検査+腹部画像検査(特にエコー)

です。どれか単一の検査で腎機能の異常は語れないのです。

ご参考になれば幸いです。

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