Fabrès V, Dumont R, Garcia M, et al. Evaluation of oral telmisartan administration as a suppression test for diagnosis of primary hyperaldosteronism in cats. J Vet Intern Med. 2023;37(4):1341‐1347. doi:10.1111/jvim.16689
背景:
テルミサルタンに基づく抑制テストの開発は、今日でも難しいとされる猫の原発性アルドステロン過剰症(PHA)の診断を容易にするかもしれません。
対象動物:
健康な猫10匹とPHAを持つ猫6匹。
方法:
健康な猫でテルミサルタン抑制試験(TST)を調査するためのプラセボ対照のクロスオーバーデザインを使用した前向き研究、およびPHAを持つ猫でのTSTの評価。テルミサルタン1 mg/kgまたは2 mg/kgまたはプラセボの経口投与(PO)の前(T0)、および1時間後(T1)、1.5時間後(T1.5)に血漿アルドステロン濃度、カリウム濃度、収縮期血圧(SBP)を測定しました。
結果:
健康な猫の中央値年齢は3歳で、範囲は1〜7歳でした。健康な猫では、2 mg/kgのテルミサルタン投与はT0と比較してT1およびT1.5でアルドステロン濃度を有意に減少させました。プラセボはアルドステロン濃度に有意な影響を与えませんでした。PHAと診断された猫では、2 mg/kgのテルミサルタン投与はT0と比較してT1またはT1.5でアルドステロン濃度に有意な変化を引き起こしませんでした。どの猫でもテルミサルタンの有害な影響(例:高カリウム血症、全身性低血圧)は観察されませんでした。
結論と臨床的重要性:
経口TSTは、猫のPHAの診断のための診断テストとして有望です。
【院長コメント】
猫ちゃんの原発性アルドステロン過剰症は非常に稀な病気で、副腎の腫瘍性疾患ですが、猫ちゃんの全腫瘍性疾患の0.5%程度の発生率という報告もあります。故に、なかなか気付けないこともあるかも知れません。
症状は「低カリウム血症性筋障害」が特徴的で、うまく歩けなくなったり首が上がらなくなったり「なんだか動きがおかしい」感じです。
他には高血圧による盲目、脳障害などです。
テルミサルタン(商品名:セミントラ)という身近な薬で、しか投与からも1,2時間以内により確実に診断できるようになるということであれば非常に有用だろうと思います。
続報が楽しみです。