皆さんこんにちは。院長です。

ワクチン接種のタイミングに関して驚かれる事が多いため、こちらにご説明させていただきます。

当院は、ワンちゃんの5種ワクチン、ネコちゃんの3種ワクチン(これらをコアワクチンと表現したりします)に関しては特別な理由がなければ

3年毎の追加接種「でも良い」

とお伝えさせていただいております。

ここでまず最初にお話させて頂きたいのは、1年毎が間違いというわけではありません

3年に1回だと(日本では?)不都合なこともあるのです。

今まで1年毎に接種していた方もご覧いただいてると思いますので、まずはご安心ください。

さて、当院がなぜ3年に1回の追加接種でも良いとしているのか

私の主な判断材料は2つあります。

1つ目はWSAVAのワクチネーションガイドラインです。

これは2015年に発表された科学的根拠に基づくワクチン接種計画の指針となるものです。

2つ目が2021年の日本の学会講演です。

WSAVAのガイドラインにはかいつまんで以下のような事が書いてあります

・成犬のコアワクチン接種後の「最短」の免疫持続期間(DOI)は3年だよね
・だから大多数の子はそれより遥かに長い期間の免疫が持続するんだよ
・DOIが1年と記載されている国もあるけど獣医師と飼い主様との同意の上で3年毎追加接種できるよ
1年毎に接種したから「強い」免疫が得られるわけじゃない
・ワクチンは有害反応もあるよ。接種回数が多ければその可能性も増えるよ
ネコちゃんはヘルペスウイルスとカリシウイルスの感染リスクが高い環境では毎年接種した方がいい場合もあるよ
・でも基本的に室内飼育なら3年に1回をお勧めするよ
・接種から3年後に抗体チェックするといいけどワクチン接種よりも高いのが難点だよね・・・

2021年の学会ではかいつまんで以下の様な提言がありました

・そもそも免疫は抗体だけではなく、細胞性免疫もあり記憶免疫は非常に長く保たれる
・なぜ必要以上に接種してはならないのかを知る必要がある
では 必要以上の免疫刺激で「アナフィラキシー[1]」や「自己免疫性疾患[2]」のリスクが上昇
[1]Vaccine-Associated Adverse Events. E K Meyer. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2001 May;31(3):493-514.
[2]Vaccine-associated immune-mediated hemolytic anemia in the dog. D Duval , U Giger. J Vet Intern Med. 1996 Sep-Oct;10(5):290-5.
では「注射部位のしこり[3]」、「アナフィラキシー[4]」、「慢性腎臓病[5]」のリスクを上昇
[3]Vaccine-associated feline sarcoma: current perspectives. Corey F SabaVet Med (Auckl). 2017 Jan 12;8:13-20
[4]Reaction rate in cats vaccinated with a new controlled-titer feline panleukopenia-rhinotracheitis-calicivirus-Chlamydia psittaci vaccine. R M StarrCornell Vet. 1993 Oct;83(4):311-23.
[5]Risk Factors for Development of Chronic Kidney Disease in Cats. N C Finch, H M Syme, J Elliott. J Vet Intern Med. 2016 Mar-Apr;30(2):602-10.

2021年の学会では、日本の臨床獣医学会の権威とも言える先生が、おそらく大きな責任のもと発言していただいており、大変感銘を受けました。

「病気を予防したい為に接種するワクチンで、病気を作り出すようなことはしたくない」

そういう思いで、当院では必ずしも1年毎に追加接種を勧めてはいない、ということになります。

ただ、ガイドラインも変わる可能性があります。

その時にはまた、あらためてワクチン接種計画について考えたいと思います。

ちなみに、ノミ・マダニの予防期間に関しても良く質問されるのですが、

国立感染症研究所昆虫医科学部」様の提言により、通年の予防を推奨しております。

これからもワクチン、ノミ・マダニ、フィラリア、いずれもなるべくエビデンスに基づいた予防方法を提供できるよう努力いたします。

どうぞよろしくお願いいたします。

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