巨大な肛門周囲腺腫を経験しましたので報告いたします。
肛門周囲腺腫、とはその名の通り肛門の周りの皮膚に出来る良性腫瘍です。
しかし、今回の症例はパッと見た時(またもや)悪性ではないかと思いました。
まず皮膚と言うよりは皮下腫瘤、しかも直腸検査では5cmくらいの奥行きあり
単純にデカ過ぎると思いました。直腸粘膜から出来物が透けて見えるほどでした。
何はともあれ、こう言う時は細胞診をします。
細胞診とは細い針で出来物などを刺して、採取された細胞を顕微鏡で観察することです。
これは肛門周囲腺の腫瘍と考えられます。
細胞診では良性悪性の判断は出来ません。
しかし、肛門周囲腺の腫瘍はこの良性、悪性の判断は非常に特別な意味を持ちます。
なぜなら、良性なら去勢手術単独で治る可能性があるからです。
細胞診で判断が無理なら、病理組織検査をするしかありません。
病理組織検査とは、出来物を一部あるいは全体を切除し、塊を顕微鏡で観察する方法です。
手術となるため、去勢手術も同時に行いました。腫瘍は全体の切除は困難なので、一部分の切除です。
病理組織検査の結果は…
【診断】肛門周囲腺腫
【所見】提出組織は、検索範囲において周囲との境界が明瞭な腫瘍巣が形成される。腫瘍巣周囲では過形成を示す肛門周囲腺が少量認められる。腫瘍巣は僅かな結合組織で区画され、肛門周囲腺に由来する腫瘍細胞が敷石状に増殖する。観察される腫瘍細胞の多くは中型類円形で、好酸性に染色される細胞質をやや広く有す。核は類円形で核小体は1個程度を認める。また胞巣辺縁部には細胞質に乏しい小型類円形細胞が認められる。腫瘍細胞の異型性は低く、核分裂像は稀。
つまり良性とのことでした。ちょっと驚きですね。ここまで大きくなることもあると言う事です。
あとは去勢手術の効果が出てくるのを待ちます。
さて、肛門周囲腺腫は去勢手術で治癒を望めるという珍しい腫瘍です。
悪性の肛門周囲腺癌は去勢手術で治すことは出来ません。
また、肛門周囲腺腫は去勢手術を行えばほぼ発生することがありません。
これも去勢手術を行うメリットの一つということになります。
参考になれば幸いです。