みなさまこんにちは!お久しぶりです。院長です。
春、ブログの更新ができずにそのまま夏を迎えてしまいました。
大変申し訳ありません!!ずっと働いていたのです!!サボっていたわけではありません!!!!
さて、皆様は「膀胱結石」についてどんなイメージがあるでしょうか?
ストルバイト結石、シュウ酸カルシウム結石
の二大結石は聞き馴染みがある方も多いでしょうか(実際は他にも色々な結石があります)。
ストルバイト結石=フードで溶ける
シュウ酸カルシウム結石=どうやっても溶けない(手術で摘出)
というところもご存知かも知れませんね。
結石の鑑別方法ですが、実は確定は結石を直接採取しなければ判明しません。
レントゲン、エコー、尿検査をしても、「〇〇結石っぽいね」というところまでしかわからないのです。
「ストルバイト結晶尿」「シュウ酸カルシウム結晶尿」
という言葉も聞いたことあるかも知れませんね。しかしこれは存在する結石と必ずしも一致しないこともあります。
例えば上の写真は、「シュウ酸カルシウムっぽいかな〜」という感じがします。尿検査では一応シュウ酸カルシウム「結晶」が認められました。
結石溶解フードを2週間~4週間くらい試し、全く大きさに変化がなかったので手術で摘出したところ
こんな形の石が取れ、結石分析に出して初めて「シュウ酸カルシウム結石」と診断できたわけです。
長くなりましたが、今回ご紹介差し上げる症例は、
✅一度ストルバイト結石を患らい、手術をして全部摘出した
✅けれども再発し、頻回排尿してしまうようになり管理も大変
という症例で、大変お困りの様でした。レントゲンは次の様になります。
例で挙げた症例とは、状況が大きく違うのがお分かりでしょうか?(ここまで大きいと、腹部の触診時点で結石の存在に気づく事ができます。)
膀胱の中が全て結石で埋められてしまっております。これでは蓄尿出来ないので、頻繁に排尿しているのですね。
これは凄く「ストルバイト結石っぽい」んです。トゲトゲしていないからです。じゃあ尿検査はどうかというと、
ストルバイト結晶尿+重度の細菌尿
でした。
正直、これほどの結石はよっぽど手術した方が早く無くなります。しかし、一度手術した身ですから、何とか通院で治したいというのが飼い主様の願いでした。
ここで皆様に知っていただきたいのは、
尿路感染のコントロール無しに、ストルバイト結石は治らない
ということです。尿路感染は尿pHをアルカリ性に偏らせ、ストルバイトが作られやすくなるのです。
実は本症例は抗生剤をずっと使用していたのですが、どうも効いていないと考えられました。
そこで、「抗生剤の感受性試験」というものを行います。
見つかった菌が①、②と示されておりますが、膀胱炎ではかなり一般的な細菌です。
「S」で示されているのが効く可能性のある抗生剤、「I」は微妙、「R」は効かないと考えられるものです。
これまで使用されていた抗生剤を黄色のマーカーで示しましたが、「S」と出ておりますね。実際には効いていないので、青のホスホマイシンを使用してみることにしました。
そして、より確実に溶解できるように、フードも今までの結石予防用フードから違うメーカーのフードに変更してみることとしました。
尿検査は2週間毎に行い、抗生剤の効きが悪くなっていないか確認します。
尿路感染の制御
フードの変更
細かな尿検査
その様に治療した経過が以下です
ということで、無事手術しないで結石を消失させることができました。もちろん尿は無菌状態を保っています。
飼い主様、ワンちゃんともに約半年、投薬とフードを欠かさず非常に頑張りました!
実は私もここまで大きい結石に溶解療法のみで治療した記憶がないです。
困っていた頻尿、血尿は消失し、たっぷりとまとまった尿をすることができるようになりました。
しかし再発しやすい体質であることに変わりはありませんので、これからも注意深いモニタリングが必要だと思います。
なかなか治りにく膀胱結石にお困りの動物とそのご家族の方の参考になれば幸いです。