みなさまこんにちは。お久しぶりです。院長です。
開業から一年経ちました!ほとんど休まずに働いていましたので、あっという間かと言われれば長かった様な気もします!!
一周年記念キャンペーンにはたくさんの励ましのお言葉をいただきました。本当にありがとうございます。
なかなか時間が取れなくて、すっかり更新が滞ってしまいました。
さて、当院ではネコちゃんの「おめめ」の相談を頻繁にお受けするのですが、
これがなかなかに獣医師泣かせなのです。
症状としては
・めやに(眼脂)
・流涙
・赤目
・しょぼしょぼする
などに加えてその他の呼吸器症状
・くしゃみ
・鼻水
・咳
があるかも知れません。
今回は結膜炎に注目してお話しいたします。
上記の様な目の異常を訴えられ、いくつかの検査にて結膜以外に異常が見当たらない場合、結膜炎と診断いたします。
結膜炎とわかった後の鑑別診断はそれほど多くありません。
「おそらく感染性の結膜炎」なのです。
(アレルギーではないのか?とご質問いただく場合もありますが、一般的では無く、通常呼吸器症状とは関連しません)
(稀に好酸球性結膜炎という非感染性の結膜炎もありますが、これは後述する細胞診で簡単に検出できますので問題ではありません)
では何が難しいのか…それは「何が感染しているのか突き止めること」です。
考えられる病原体は
A.ヘルペスウイルス
B.クラミドフィラ(旧クラミジア)
C.マイコプラズマ
D.その他
です。
この中で「D」はあまり重要ではありません。問題はA~Cのどれなのか、です(理由は後述します)。
そこで、私はまず結膜のぬぐい液を細胞診します(顕微鏡で見ること)。
細胞診では
A→核内封入体が見られることがある(感染後短期間。でも非常に検出困難です)
B→細胞質内封入体が見られることがある(感染7~14日で最も良く観察される。とあるが、実際そのようなピンポイントでのご来院は少なく、検出困難です)
C→稀に結膜上皮細胞表面に確認できることがある。
ということになるのですが、どの感染症なのか判断する検査として、院内でできる検査はここまでです。
すなわち、ご来院時にどの感染症か判断できる事はほとんどありません。
そのため、診断のためには今や新型コロナでお馴染みの「PCR検査」を必要とします。
凄く良い方法なのですが、やや高いのが難点です。
「そこまで検査する必要が有るのか?」そう思いませんでしょうか。
「とりあえず抗生剤点眼と消炎剤で治療してはいけないのか?」
もちろんさまざまなご希望や条件に応じて治療プランは決定いたしますが、それでは上手くいかない可能性が十分にあるのです。
C、D →カリシウイルスやレオウイルスには抗生剤は不要ですが、多くは自然治癒ないしは抗生剤+消炎剤でよくなるでしょう。
A →抗生剤は効きません。抗ウイルス薬が必要ですが完全には除去できず、神経に潜伏感染してストレスにより再活性化します(人間のヘルペスと似ていますね)。
B →抗生剤が効きます。しかし、ドキシサイクリン21~28日間あるいはアモキシシリンクラブラン酸の28日間投与が病原体の排除に必要となります。
ということで、全然治療法が違います。
対症療法に終始した場合、
C、D → めちゃめちゃ良くなりました!
A、B → 一時的に良くなったかもけど、再発しました…
多少良くなったけど治りきりません…
というパターンが想像できます。
そのため、
最短で治したい!とお考えの場合や、
何度も繰り返すんです!という場合は
やはりPCR検査を早めに行う必要があるでしょう。
因みに、先日「ヘルペス、クラミドフィラ、マイコプラズマ全て陽性」という子に遭遇いたしました。
この場合、細胞診ではおそらく判断しきれません。やはりPCRは必要ということになります。
「初めからクラミジアを想定して1ヶ月抗生剤をやればいいのでは?」
とお考えになられる方もいらっしゃるかも知れません。これは全く勧められません。
もしクラミジアじゃないのに抗生剤を1ヶ月も飲んだら、ただ単に腸内細菌や表皮常在菌のバランスを崩すだけの害にしかなりません。これは慢性腸炎や皮膚炎の原因になるかも知れません。
「とりあえず1週間抗生剤点眼して、悪くなったらまた繰り返せば良いのでは?」
これも長期ではお勧めできません。細菌は抗生剤に対して耐性を持つものなのです。繰り返し同じ抗生剤を使うことによって、次第に効かなくなる可能性があります。
どうでしょう。ネコちゃんの結膜炎、かなり奥が深いというか、悩ましい病気では無いでしょうか。
なかなかネコちゃんの「おめめ」のしょぼしょぼが治らない…何かしてあげられないのか?
そんな時は是非一度ご相談下さい。
ご参考になれば幸いです。